読書・映画日記 - 2023年9月
📕資本主義リアリズム
著者:マーク・フィッシャー 訳者:セバスチャン・ブロイ、河南瑠莉 出版:堀之内出版(2018)
平易な言葉で書かれている。なのに微妙に捉えどころがない。……それは私がこの本に挙げられている映画や音楽の知識がないからだろうか。
だとしても、読んでいると「あーそれそれ」と思うことが多々あり、ちょっと時間を置いてまた読み直したいと思った。
「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像する方がたやすい」という言葉(元はアメリカのマルクス主義の思想家フレドリック・ジェイムソンの発言で、それをスロベニアの哲学者スラヴォイ・シジェクが広めた…らしい)が紹介されていたが、本当にね、と暗澹たる気分になる。
「世界の終わり」というのは、人類が滅亡するとか隕石が落ちてくるとかじゃなくて、「文化の死」なんじゃないかなと思ったりした。資本主義に絡みとられて延々と繰り返される複製とリバイバル。新しいものは何一つ生まれず、劣化版と偽物ばかりの世界。それって今まさに向かっている世界じゃないのかな。
資本主義の行き着く先に文化はない。
しかし、まあ、だからと言って、本当に絶望するわけにはいかないんだけども。そしてまた、だからと言って目を逸らすわけにもいかないんだけど(そりゃまあ、まともな人ほどメンタルをやられる)。
「この道しかない」わけではなかったよと、死ぬ時には思いたい。
(2023年9月1日読了)
追記:この樋口恭介さんの記事を読んで、この本を読もうと思いました。
📕ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年
著者:森本俊司 出版:文藝春秋(2019)
本人へのインタビューや作品紹介を交えながら、ブルーナの生涯とその仕事を紹介した一冊。ぼんやりとは知っていたけども、家族や戦争の話など、初めて知ることも多くてとても興味深かった。
うさこちゃんが素敵なのはもちろん、デザイナー時代の装丁のデザインもかなり好き。2,000冊以上デザインしたというのだからすごい。シンプルで、メリハリが効いてて、とにかく黒がかっこいいんだよなあ…。
本筋とはちょっとずれるかもしれないけど、著者がブルーナにモンドリアンの話をしたエピソードが面白かった。ブルーナとモンドリアンはふたりともオランダ人で、黒と赤と黄色と青で構成された作品を作っていて、なんだか似ているようだけど、実は全く違うという話。モンドリアンはコンセプトから出発するけど、ブルーナは具象を極力シンプルにする。
そういう点でいれば、現代芸術の多くが……いや現代のもののほとんどがコンセプチュアルなのかもしれないなと思ったりもした。
ミッフィーの絵本、揃えたいなあ…。
(2023年9月8日読了)
🎬セルラー[Cellular]
監督:デヴィット・エリス 脚本:クリス・モーガン 出演:キム・ベイシンガー、クリス・エヴァンス、ジェイソン・ステイサム 公開:米(2004)、日(2005)
午後ローでかかっていたのを録画しっぱなしだったので消化。
B級かな……と思って気軽に見始めたけど、いやいやどうしてこれが面白い。脚本がきっちりしていて好印象。最後まで携帯電話が小道具として活きてるし、登場人物の行動や性格にも納得感がある。こういうエンタメ映画ってすごい賞を獲ったりは絶対しないと思うけど「これでいいんや、映画は!」と思わせてくれる佳作だった。脚本はのちにワイルド・スピードシリーズを書いた人でした(ワイルド・スピードはちゃんと見たことないけど)。
主人公のライアンはキャプテン・アメリカで売れる前のクリス・エヴァンス。チャラいゆえに?めちゃくちゃ臨機応変に危機対応していく。優秀〜。
誘拐される母親(キム・ベイシンガー)もめっちゃ行動力があってナイス。たぶん父親よりはるかに強い。理系の知識を活かしてこちらも危機を乗り越える。ちゃんと学校の先生設定だから知識豊富でも何の違和感もない。車で小屋をぶち壊す思い切りの良さが最高。
なんだかんだで最後に助けてくれるムーニー警部を演じているのはウィリアム・H・メイシー。テリア犬を彷彿とさせるいい感じのおっさん。見たことある…と思って調べたら「ER」とか「カラーオブハート」にもでてらっしゃる。
そして敵がジェイソン・ステイサム。勝てる気がしねえですね。
めっちゃ面白かったです。
(2023年9月9日鑑賞)
📕デザインの仕事
著者:寄藤文平 出版:講談社(2017)
最近、積極的にデザイナーやイラストレーターの本を読んでいるけど、寄藤さんは本当にクールというか理詰めというか、その仕事人っぷりに軽くダメージを受けてしまう一冊だった。おれは……おれはほんとうにだめなやつだ……という気持ちになる。しかし面白いから困っちゃう。あーほんとダメだよ私は。
……というのは置いておいて、しかし、まあ、本当にすごい人だなと思う。
でもデザインでも仕事でも、うまくいく時/いかない時の感じはすごいわかる。アイデアがうまく形にならない時は、抜本的に何か間違ってる、という話。かなりラフでもこれはいけたなという手応えがある仕事もあるし、これはダメかも…というのは大抵やっぱりどこか間違ってて力技で持って行っても最後までうまくいかない。これは本当に気をつけたいこと。
あと、マーケティングというかストーリーについての話も面白かった。デザインはどんどんシンプルになり、それに変わってそこに付随するストーリー(プレゼン)に重きが置かれている、という。
確かにストーリーは強力なツールなんだけど、あらゆる物がストーリーを話し始めて食傷気味なる。
(2023年9月16日読了)
📕たりる生活
著者:群ようこ 出版:朝日新聞出版(2022)
群ようこが引っ越しを決めてから物件を探し、引っ越してから1年経つまでのエッセイ。
60Lのザックでバックパッカーやってた頃は、この60Lに収まるものだけで当分暮らせるのに、どうして家に帰るとこんなにも物があるのかとうんざりしていたことを思い出してしまった。
生きてると、何かと増えちゃうんだよなあ…。
1年以内くらいには引っ越しを考えているので、ほんと物減らそう…としみじみ思いました。
(2023年9月19日読了)
🎬①仮面ライダー対ショッカー、②仮面ライダー対じごく大使、③仮面ライダーV3対デストロン怪人
監督:山田稔 出演:①②③藤岡弘、②佐々木剛、③宮内洋 公開:①②(1972)、③(1973)
3本まとめてやってたのを夫が撮っていたので鑑賞。かつての東映まんがまつりでかかった1本あたり30分程度の中編映画。
仮面ライダーはじめほとんどの特撮はリアルタイムでは見ておらず、昭和ライダーを夫が録画して見てたのを横から見ていて、なんとなく何シリーズか見ただけなので、全く詳しくないんですが。
今みればストーリーは荒いし特撮もチャチだったりするんだけど、カメラワークや特殊効果など、見るべきところもたくさんあって、結構好きです。俳優さんも変身せずに長々と生身で頑張っていたりする。明らかに今のは事故では? みたいな危ない場面もちょいちょいあり、俳優さんはじめスタッフは大変だっただろうなと思います。爆発もやりすぎ感がすごい。特にV3は素人目にもわかる危険さで、wikiとか読むと怖い…。
あと、これは完全に勝手な見方なんですけど、昭和のあの頃の風景や風俗がなんともいえずいい味。妙におしゃれな邸宅とか、郊外の造成地とか、地方の旅館とか、車とかファッションとか、ウワー昭和〜と思いながら見ちゃう。
そんなこんなで3本まとめて見たんですけど、なんかこう、庵野監督はこういうのを「シン仮面ライダー」で撮りたかったのかなあ…と思うと切なくもなります。だってもうこんなの絶対に撮れないもの。法律的にも時代的にも無理。作品というのは良くも悪くも時代からは逃れられないものだなと思いました。
(2023年9月20日鑑賞)
🎬スピード[Speed]
監督:ヤン・デ・ボン 出演:キアヌ・リーブス、デニス・ホッパー、サンドラ・ブロック 公開:米(1994)、日(1994)
懐かしい。午後ローか何かの放映を夫が録っていて、なんとなく一緒に見る。キアヌ・リーブスが若い。サンドラ・ブロックの眉毛が細い。90年代〜。
昔見たはずなのに、結構忘れていて、面白かった。
やっぱCGより本物の爆発&模型の方が迫力ある! と思っちゃうのは古い人間だからだろうか。CGって、お金も人手もかかってるのはわかるし派手なんだけど、大変申し訳ないことにどうしたって薄っぺらく見えてしまう。その点、昔の映画はとにかく物量をぶち込んだ人海戦術をやってくるので、画が強い。こういう爆薬の使い方やスタントマンの技術って、いつかロストテクノロジーになっちゃうんだろうな…。いや……CGは安全だし、エコだし、いいことなのかもしれないけども。
先日の昭和ライダーの話にも通じちゃうけど、まあそうはいってももうこういうのは撮れないね、という話にはなる。
今の時代には今の時代にしか撮れないものがあるはずなので、頑張って作るしかないですよね。
(2023年9月28日鑑賞)
🎬ダーティハリー5 [The Dead Pool]
監督:バディ・ヴァン・ホーン 出演:クリント・イーストウッド、パトリシア・クラークソン、リーアム・ニーソン 公開:米(1988)、日(1988)
ダーティハリーシリーズ最後の一作。
ダーティハリー、基本的に好きなんですけど、今作が一番ダメかも。相棒も犯人もなんか微妙。役者も設定ももう少し上手く活かせそうな感じがするのがより微妙。ラジコンのカーチェイスはちょっと無理があるんじゃないかなあ…。
音楽は80年代後半な感じで嫌いじゃないんだけど。
なんにせよ、そりゃもう続きは作れないよな〜という印象でした。うーん。
余談。wiki見て知ったたんだけども、初めに殺されるロックスターやってるの、ジム・キャリーなんだね!! 気づかなかった!!
(2023年9月30日鑑賞)