読書・映画日記 - 2023年10月-12月
📕 引越貧乏
著者:色川 武大 出版:新潮社 1989
初めは無茶苦茶で面白い人だなあくらいだったけど、読み進めるうちに辛くなってきてしまった。これが最後の作品だったよう。最後になるにつれ、やや自暴自棄な死の気配が漂ってきて辛い。
(2023年10月10日読了)
📕 スマホ・デトックスの時代:「金魚」をすくうデジタル文明論
著者:ブリュノ・パティノ 訳者:林 昌宏 出版:白水社 2022
スマホの利用時間を減らすには…みたいなハウツーかなと思ってたら全然違った。インターネット黎明期から現在に至るまでの理想と現実の歴史の話。当初のように理想郷にはならなかったインターネットの切なさよ。
いかにマーケティングが個人情報を餌として時間を食い荒らしているか。そして、結局は意識してインターネットとは距離を取るしかないという話。
気をつけよ……。
(2023年10月18日読了)
📕 マンガノミカタ:創作者と研究者による新たなアプローチ
著者:こうの史代、竹宮惠子、吉村和真 出版:樹村房 2021
あらゆる漫画を読んできたわけではないけれど、少なくともこうの史代は天才の一人だと思う。メタな視線で漫画を解体・再構成するあの才能にはいつも驚かされる。漫画というメディアをここまで自覚的に活かせている人はそうはいない(他に思いつくのは赤塚不二夫とかかなあ)。
このムックでは『この世界の片隅に』の初めの一話を解説してくれているけど、『この世界〜』は後半の表現が本当にすごいので、物語の作り方とか伏線とか、そういうのに興味がある人はぜひ読んでいただきたい。
また、吹き出しとか、オノマトペとか、いわゆるお約束の表情とか、ともすれば当たり前のものとして無自覚に使っちゃうけど、改めてその意味を疑うことは、表現者として必要なのではないかと思う。私は漫画ではなくてイラストだけど、とても勉強になった。
逆に「作る側」に興味がないと、このムックはイマイチかもしれない。実際Amazonの評価もイマイチだ。
制作に関わったり、制作するってどんな感じだろうと興味がある人にはおすすめ。
(2023年10月22日読了)
📕 多様性を楽しむ生き方: 「昭和」に学ぶ明日を生きるヒント
著者:ヤマザキマリ 出版:小学館 2020
ヤマザキさんの本は結構読んだので、この手の過去の話は概ね知っていることばかり(というのも我ながら怖いな私。気になる人の本は割とまとめて読んじゃうので)。ただ、初めてヤマザキさんの本を読むという人は面白く読めると思うので! 読んだことないよって方には良いかも。
ただ、こういう本の難しいところだと思うんだけど、結局は昔は良かったみたいな懐古主義になられると読んでてモヤっとしてくるところがある。そんなことはないと本人は言うんだけども。
昔はあんなによかったこんなによかった、戻りたいわけじゃないけどね。今の日本はつまらない、なんでか知らないけどね。みたいな。うう、意地の悪い読み方だろうか……。
同じ人のエッセイばっかり読むとダメだな……と思ってしまった。
(2023年12月6日読了)