読書・映画日記 - 2024年5月-7月
📕はやく一人になりたい!
著者:村井理子 出版社:亜紀書房(2023)
心の師匠、村井理子さんのエッセイ。
『兄の終い』も『家族』もバッチリ読んでいるので、村井さんが子供時代に入院していたエピソードにはちょっと泣いてしまう。ICUのガラス越しにふざけるお兄ちゃん……泣くしかない。
自分自身の病気もそうだし、身近な人の死もそうだが、本当に人生は短く自分の時間は自分で守らねばならないと思う。家族もみんなも大事だけどね。まずは自分を差し出しすぎない。それくらいの心構えで自分のために生きていくくらいでちょうどいいんじゃないかな。
(2024年7月30日読了)
📕命取られるわけじゃない
著者:村山由佳 出版社:集英社(2021)
猫好きの母に勧められて読む。この著者の本は他に全く読んだことがなかったけど、「ネコメンタリー」の人なんですねえ。
恋愛小説の大家……とのことで、なるほど、文体がなかなかに粘っこい。これは100%自分の好みの問題だけど苦手だったな…。
猫はかわいいっす。
(2024年7月16日読了)
📕作家と犬
編:平凡社編集部 出版社:平凡社(2021)
先だっての『作家と猫』の犬版。表紙は中野孝次のハラス。家の庭にあるお気に入りの椅子に座ってエヘンという顔をしている。本当にいい顔。
猫と読み比べて思うけど、犬は割と一個の個体というか、一人格(犬格??)を認めて飼っている人が多い印象。犬は人のいうことを大抵はきくから、家族みたいな感じになりやすいのかも知れない。
- 向田邦子「犬の銀行」
犬と貯金という全く関係なさそうな話をつらつら繋げていく向田邦子のうまさに舌を巻く。うますぎる。
- 田中小実昌「犬のわる口」
この人の作品は読んだことはないけど、微笑ましくて好き。犬が人間臭くてとてもいい。犬って相手を見て態度を変えるよね。
- 辻まこと「イヌキのムグ」
イヌとタヌキのあいのこ?というムグの話。著者が「ラ・タビエンヌ」という歌を歌うと寄ってくるというのがなんだかいい話。
(2024年7月13日読了)
📕作家と猫
編:平凡社編集部 出版社:平凡社(2021)
昭和の文豪から現代の作家までいろんな人の猫にまつわるエッセイ、小説、詩や漫画などを集めたアンソロジー。こういった本は自分じゃ絶対選ばない、手に取らないであろう人の文章も収められていて面白い。
しかし、実はあまり面白くない話が多かった。やたら猫を女に喩える文章が多くて辟易する。猫は何を考えているかわからない、美しいけどわがまま、誘惑してくるくせに撥ねつける、みたいな、手垢のついた話が多くてウンザリ(それとも書かれた当時、例えば明治大正昭和あたりでは新鮮味があったんだろうか?)。可愛がり方もベタッとしていて苦手な文が多かった。
猫っていうのはこういうふうに人から幻想を投影されがちな生き物なんだろうか……? それとも単純に選者の趣味なのか。
以下の話は好きだった。
- 洲之内徹「長谷川潾二郎『猫』」
画家の長谷川潾二郎が飼い猫の太郎をモデルに描いた絵にまつわる話。猫の絵も素敵だし、この話も面白かった。
- 室生朝子「優雅なカメチョロ」
室生犀星が飼っていた猫のカメチョロの話を娘の朝子が書いている。タイトルの通りカメチョロはとっても優雅だが、室生犀星も負けず劣らず優雅だ。自分の遺骨を分骨すると決めていた文学碑のそばに、亡くなったカメチョロの毛を人知れず埋める室生犀星に涙。
- 内田百閒「迷い猫の広告」
ノラが失踪した際に百閒先生が出した新聞の折り込み広告。平凡な駄猫です、と言いつつも溢れる愛が切ない。
- 水木しげる「猫の道」
水木しげるが書くと、文章なのにコマ割りが浮かぶというか、あの絵柄で猫がゆうゆうと猫の道を歩いてる感じがしておかしい。
- 谷崎潤一郎「客ぎらい」
わかる。猫を見てると尻尾で結構何かを言っている。たしかに尻尾があると便利かも知れないな。
(2024年7月10日読了)
📕ストーナー
著者:ジョン・ウィリアムズ 訳者:東江一紀 出版社:作品社(2014)
曰く、最も美しい小説……みたいな惹句に煽られて読んでみたけど、うーーーーーん、私はちょっとイマイチだった。
そもそも主人公のストーナーが好きになれなかったので、その時点でアウトではある。描かれる女たちが如何にも!な感じ(神経過敏でエキセントリックな妻、理解あるミューズのような女生徒 などなど…)なのもちょっとなあ……。
ストーナーは好きに生きて好きに死んだ人で、まあ幸せだったんじゃないすかね……という感想。
(2024年5月25日読了)
📕貧乏大好き~ビンボー恐るるに足らず
著者:東海林さだお 出版社:大和書房(2022)
過去に出版された本から貧乏にまつわる話をピックアップして再編集したアンソロジー。東海林さだおってもちろん知ってはいたけど改めて読んだことはなかったので新鮮におもしろかった。
口語体でさらっと読める文体は、さすが四コマ漫画の人だと思う。めっちゃ読みやすい。
こういう読んでてちょっと笑える文章にとても憧れる。けど難しいんだよなあ。さすがだなあ。