生誕150年 池上秀畝―高精細画人―
会場:練馬区立美術館 会期:2024年3月16日-4月21日
気がついたら回帰終了間際だったので駆け込み観覧。
池上秀畝(いけがみ・しゅうほ)は長野の人。明治22年に上京、同い年で東京芸大で学んだ菱田春草の「新派」に対して、師匠につく「旧派」の人で、いままで展覧会などでもあまり取り上げられなかったそう。たしかに、菱田春草は知ってるけど、池上秀畝は知らなかった。
が、見て驚いたことに結構好きだった。実物の「桃に青鸞図」も迫力があってよかったし、何よりたくさんの写生画がよかった。多種多様な鳥を中心に、人物から風景まで、巧みな写生がとても美しかった。師匠の言いつけを守って写生を多く描いたと解説されていたけど、たぶんそれ以上に鳥を描くのが好きだったんだと思う。小鳥や昆虫など小さな生き物たちを美しく描いている。
どんな絵描でもそうだけど、写生は洋の東西など関係なく対象に迫る感じが好きだ。個性も何もなくて、ただ一心に写しとって、結果としてとても美しい。もちろん、絵が仕上がればその人らしさはどこかにあるんだけど、それが第一目的じゃない、ただ絵を描くことの基本みたいな感じがしてすごく好きだ。
写生以外は全体的に大きめの作品が多かったが、その中でも、大きな風景画の中に小さく鹿を配した作品が数点あってよかった。木々や山々がひたすら大きく描かれた中に、ポツリポツリと鹿がいる。その寄る方なさが胸に迫る。かつては鹿だけでなく人だって寄る方なく生きてたんだろう。家があろうが村があろうが、自然は本当に巨大で、人間なんてとても敵わなかっただろうと思った。
(2024年4月18日観覧)